アスファルトシート防水の劣化に対応 横浜市西区で冷工法による屋上改修工事を実施
今回は、横浜市西区にある建物で行われたアスファルトシート防水の改修工事について、現場での様子とともに丁寧に解説していきます。
既存の防水層はアスファルトシート防水で、施工から約20年以上が経過しており、今回が初めての本格的な防水改修となりました。加えて、現場は火気の使用が制限される環境のため、トーチ工法ではなく冷工法(常温工法)が採用されています。安全性と品質の両立を目指し、現場の状況に合わせた柔軟な対応が求められました。
既存防水層の劣化状況と最適な工法の選定
まずは、既存防水層の状態を調査したところ、立ち上がり部には一部の「浮き」や「膨れ」が見られたものの、全体的には構造的な損傷や大規模な破断は確認されませんでした。このような状態では、「増し張り工法」が有効と判断できます。
そこで、平場は既存層を活かした増し張り工法、立ち上がりは既存シートを撤去して新たに貼り替えるという構成が採用されました。この工法は、コストパフォーマンスが高く、なおかつ信頼性も確保できるバランスの取れた方法です。
また、火気を使えない現場環境のため、火を使わずに施工できる「冷工法」を選定。これは、アスファルトシートの裏面に粘着材が施されており、剥離紙を取り除くだけで施工が可能な常温接着タイプの材料です。火災リスクを避けながら、高い密着性が得られるため、安全面と施工性に優れています。


立ち上がり部の撤去と下地処理のポイント
施工の初期段階では、立ち上がり部分の既存防水シートを完全に撤去する作業が行われました。使用された道具はスクレーパーやバールなどですが、単に剥がすのではなく、下地コンクリートを傷めないように慎重かつ丁寧な手作業が求められます。
また、撤去後の下地には、経年劣化によって生じた「膨れ」や「浮き」といった症状も確認されました。これらの部分には、局所的にトーチバーナーを使用してアスファルト層を再加熱・再溶着することで、密着性を回復させています。全体としては冷工法を基本としつつ、こうした部分補修にはトーチ工法の利点を活かすという柔軟な対応が施されました。
さらに、下地処理の一環として、全体に「リベース」と呼ばれる下地活性剤(プライマー)を塗布しています。これは、旧防水層と新しいシートの間における接着性を高めるためのもので、密着不良や将来的な剥離を防ぐ重要な下地処理です。



冷工法によるアスファルトシートの施工手順
立ち上がり部には、防水仕様に基づいて二層構造の防水シートを施工します。まず一層目の下張りシートを正確に設置し、その後、表面仕上げ材として「砂付きルーフィングシート」を重ねて貼り付けます。
この冷工法シートは、裏面に粘着層があらかじめ加工されているため、剥離紙を剥がしながら丁寧に張り進めていきます。貼付後は、専用の転圧ローラーを使ってシートをしっかり圧着。とくに角部や重ね部分には力加減を調整しながら、空気が残らないように密着させることが重要です。
なお、冷工法では立ち上がりを先に、平場を後に施工するという順序が基本となります。これは、粘着シートの接合部の重なり順によるもので、施工後の雨水の流れを考慮した構成です。立ち上がり部には、防水仕様に基づいて二層構造の防水シートを施工します。まず一層目の下張りシートを正確に設置し、その後、表面仕上げ材として「砂付きルーフィングシート」を重ねて貼り付けます。



平場の増し張りと冷工法の柔軟性
平場部分では、既存のアスファルトシートを撤去せずに上から新たなシートを重ね貼りする「増し張り工法」を採用しました。この工法のメリットは、撤去作業が不要なため、作業時間と費用を大幅に削減できる点です。
この時は職人4〜5人で作業にあたり、屋上全体を1日で張り終えることができました。冷工法は、たとえ日をまたいで作業する場合でも、シート端部にシーリング処理を施しておけば雨の影響を受けずに継続できるという点でも非常に実用的です。こうした施工の柔軟性も、冷工法ならではの特徴といえるでしょう。



設備周りの処理と複合防水の使い分け
屋上には空調設備や配管が数多く設置されており、中には動かすことができない機器もありました。そういった箇所には、アスファルト系シート防水と被膜防水を組み合わせた「複合防水」で対応しています。
特に配管支持ブロック周辺では、配管がたわんで破損しないよう、現場に合わせた専用の支持台を加工・設置しました。こうした細やかな配慮により、防水性能を確保しつつ、設備の安全性もしっかり守られています。
複合防水は、形状が複雑でシートを巻き込めない部位への防水処理に非常に適しており、さまざまな現場で活用されている信頼性の高い施工方法です。


端末処理とトップコートによる仕上げ
最後の仕上げとして、立ち上がりの天端には金属製の押さえ金物を設置し、シートの固定と保護を行います。さらに、固定ビスの穴や端部にはアスファルト系のシーリング材を丁寧に充填。これにより、雨水の浸入を確実に防ぎ、耐久性を高める仕上がりとなります。
仕上げにはトップコートも施されており、紫外線や風雨から防水層を保護するだけでなく、屋上の美観にも配慮されています。今回の現場では、オーナー様のご希望で建物の印象に合わせた淡いグリーン系の色味を採用し、すっきりとした清潔感ある印象に仕上がっています。


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現場に合わせて行う適切な防水改修工事
今回の防水改修工事では、既存防水層の調査から始まり、冷工法を基軸とした適切な改修方法の選定、現場対応力を活かした柔軟な施工が実施されました。すべての工程において、職人の経験と技術力が活かされた、高い信頼性を持つ防水層の再構築が実現されています。
今回の現場のように、建物の環境条件や用途に合わせて防水工法を適切に選択することは、長期的な安心につながります。弊社では今後も現場対応力を活かしながら、一棟一棟に最適な防水工事をご提案してまいります。
防水改修をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。

