横浜市港北区 パラペット部重視の屋上防水改修工事

建物の屋上防水といえば「平場」に目が行きがちですが、実はパラペット(立ち上がり部分)の処理こそが、長期的な防水性能のカギを握ります。

今回は、横浜市港北区にあるRC造6階建てのビル屋上で行った、既存アスファルトシート防水から改質アスファルトトーチ工法への改修工事の様子をご紹介します。

防水工事の中でも見落とされがちなパラペット部の重要性と、その施工工程を写真とともに深堀りしていきます。

目次

施工前の様子

平場には既存のアスファルト防水層が敷かれており、表面には紫外線や風雨による色褪せ、粉化、めくれなどの劣化が見られました。設備配管や立ち上がりとの取り合い部分も多く、防水的な難所が多い屋上構成です。

パラペット部分も、表層の剥がれやひび割れが確認され、防水層の機能を果たしていない状況でした。こうした状態は漏水リスクを高める重要ポイントとなるため、今回の改修では重点的に処置を行います。

笠木(コーピング)の撤去

次に行うのはパラペット上部の笠木(コーピング)の撤去作業です。笠木は端部を風雨から守る役割を担っていますが、改修の際は一旦取り外す必要があります。

この現場では、既存の板金を再利用する方針ではあるものの、状態次第では交換も視野に入れて慎重に取り外しています。下地を露出させることで、下地の劣化具合や防水層との取り合い状態を確認できるため、重要な工程です。

パラペット部の笠木撤去作業

ハツリ作業

パラペットの立ち上がりと平場の取り合い部は防水の最終的な関門とも言える位置にあります。そのため、既存防水層を撤去する際には、取り合い部だけは一部意図的に残す処置を施しました。

これは、工事中の雨水の浸入を防ぐためでもあり、下地の勾配や排水設計に影響を与えないようにするための配慮でもあります。ハツリ(はつり)と呼ばれる斫り作業は、慎重さと確実な判断が求められる工程です。

パラペット部既存防水層の斫り作業

ケレン作業と下地調整

ハツリ後は、スクレーパーなどを用いて既存防水層の残留物や汚れを除去する「ケレン作業」を行います。特にパラペットの表面は、砂じん・粉化物・旧防水材のカスが残りやすいため、入念な処理が必要です。

この現場では、下地の勾配を維持するためにコンクリート躯体を削るような処置は行わず、必要最小限のケレンで整えました。こうした処置によって、次工程で使用するプライマーや防水シートがしっかりと密着する下地が整います。

立上り部ケレン作業

アスファルトプライマー塗布

下地が整ったら、アスファルト防水材の密着を助けるためにアスファルトプライマーをローラーで塗布します。材料は6インチローラーを使って均一に塗り伸ばしていきます。

このプライマーは言うなれば、「防水層と下地の潤滑剤」。しっかりと塗り込むことで、防水シートが躯体と一体化するような状態をつくり出すことができます。

立上り部アスファルトプライマー塗布 6インチローラー対応

ポリマリット25貼付け立ち上がり専用シートの活用

次は、立ち上がり部専用の改質アスファルトシート「ポリマリット25」の貼り付け作業です。このシートはトーチ工法用に開発されたもので、1000度以上の高温に耐える仕様となっており、溶着強度も非常に高いのが特徴です。

バーナーで加熱しながら、シートの裏面をしっかりと溶かし、下地に圧着していきます。下地がしっかり整っていれば、立ち上がり部は複層張り、平場は単層張りとすることで、合理的かつ機能的な防水層を形成できます。

この時点で端末の焼き付け処理も行い、膜厚の均一性を確保することで、シートが一体化したかのような仕上がりになります。

ポリマリット25貼り付け作業 バーナー使用

トーチ工法による防水シート貼り付け

次に、パラペットと平場を一体化させるように、トーチシート本体を施工していきます。

改質アスファルトのトーチ工法では、「焼き加減」が非常に重要。焼き過ぎると炭化し、焼きが甘いと接着不良が起きるため、職人の経験と感覚が求められる難所です。

端部や重なり部は、特に力を入れてしっかり押さえ込み、防水層の「一体性」を損なわない仕上げを意識します。

トップコート塗布

すべてのシート貼付が完了したら、表面にトップコート(保護塗料)を塗布します。

この仕上げ材には紫外線による劣化や温度上昇から防水層を守る効果があり、今回は遮熱性を高めた明るいグレー系を採用。夏場の温度上昇を緩和し、室内環境への影響を軽減します。

立ち上がり部トップコート塗布

 笠木金物の復旧

トップコートが乾燥した後は、取り外していた笠木金物の復旧作業を行います。丁寧に元の位置に戻し、固定ビスの打ち直し、シーリングの打設も併せて行うことで、最上部からの浸水リスクを完全にシャットアウトします。

また、入隅部や端末部にはシーリング材を適切に充填し、より一層の防水性能を高める処置も忘れずに施します。

笠木金物復旧作業

施工後の様子

最終的な仕上がりの写真です。パラペットから平場にかけて段差もなく滑らかに防水層が一体化されており、トーチ工法ならではの密着性と美観が感じられます。

押さえ金物や脱気筒、各種設備周りもきっちり納まりよく仕上げられ、漏水の心配が一切ない防水層が完成しました。

【関連動画】横浜マンション屋上のアスファルト(トーチ)防水工事

長持ちする防水は細部への気配りから

今回のように、屋上防水工事の中でも「パラペット部」の改修は非常に重要なポイントです。立ち上がり部や取り合い部の施工品質が全体の耐久性に直結するため、見えない部分こそ丁寧に確実に仕上げる必要があります。

弊社での防水工事では、ただ貼るだけではなくどうしたら長く安心して使ってもらえるかを常に考えながら、一つひとつの現場に最適な工程を丁寧に仕上げています。

「屋上の防水、そろそろ見直そうかな?」と思われた方は、ぜひパラペット周りの状態も気にかけてみてください。

ご相談・点検のご依頼もお気軽にどうぞ。現場目線で、誠実にご対応させていただきます。

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