集合住宅屋上の防水を見直す 横浜市青葉区での塩ビシートによる改修工事事例

横浜市青葉区の集合住宅屋上にて、防水改修工事を行いました。屋上は紫外線・雨風・温度差(昼夜の伸縮)をまともに受ける場所。さらに集合住宅は人の出入りや設備配管が多く、端末(防水の終わり)と取り合い(立上り・サッシ下・手摺支柱まわり)が弱点になりやすいのが特徴です。

 今回の屋上は、普段から人工芝やプランターなどで活用されており、人が歩く環境=摩耗や引きずり傷が入りやすい状況でした。こういう現場ほど、ただ新しい防水材を重ねるだけでは長持ちしません。既存防水層の種類を見極め、下地の状態に合わせて「固定」「溶着」「端末処理」を丁寧に組み立てるのが肝になります。

施工前①
施工前①
施工前②
施工前②
調査
調査
目次

 既存防水層の診断

現地状況から、既存防水は塩ビシート防水がベースでした。判断のポイントは、平場に見える固定ディスクの痕跡や、立上りのシート端末を押さえる金物納まりです。

押さえ金物
押え金物

塩ビシートは耐候性が高い一方、経年で「ジョイント溶着部の浮き」「端末シールの劣化」「入隅の追従不足」が出ることがあります。特に屋上は風で雨が横殴りになるので、端末に水が回ると毛細管現象で吸い上げが起きやすい。サッシ下や立上りの取り合いは、見た目が平気でも内部に水が入り込みやすいので、改修ではここを最優先で強化します。

既存防水シート①
既存防水シート①
既存防水シート②
既存防水シート②

 撤去・下地処理

防水は“塗る・貼る”前の準備が命です。まず既存の端末押さえ金物を外し、必要箇所は既存層をめくって状態を確認。残った脆弱層や汚れは密着不良の原因になるため、ケレン(削り・こすり)で除去し、砂・粉塵はブロワーで徹底清掃しました。

既存金物撤去
既存金物撤去
既存防水シート撤去
既存防水シート撤去
ケレン
ケレン

 屋上は平らに見えても、実は細かな段差や凹みが残っています。そこに新しい防水層を貼ると、段差の肩から劣化が始まりやすい。なので、ヘラ処理や下地調整で不陸を整え、端部は水が流れる方向を意識して“なだらかに”作ります。ここを丁寧にやると、仕上がりの見た目だけじゃなく、排水性と耐久性がしっかり上がります。

清掃
清掃
下地処理
下地処理

立上り接着剤の準備

既存防水層との相性や下地の動きを吸収させるため、まずは平場に絶縁シートを敷設します。これは新しい防水層を“直接こすらせない”ためのクッション兼、下地由来の影響を受けにくくする重要な工程です。

絶縁シート張り付け
絶縁シート張り付け
金物取り付け
金物取り付け

あわせて排水まわりは雨水が集中するので、既存ドレンの状態を確認したうえで改修ドレンを設置し、差し込み長さ・固定・止水の連続性を確保します。立上り部はシートが浮きやすい箇所のため、所定範囲に立上り用接着剤を均一に塗布し、後工程の貼り込み・押さえが効く下準備を整えます。さらに端部や重点部には銅板を取り付け、納まりを強くして後々の漏水リスクを下げていきます。

改修ドレン設置
改修ドレン設置
立上り接着剤塗布
立上り接着剤塗布

機械固定ディスクと通気性の考え方

今回の改修では、屋上全体の状況に合わせて機械固定+シート防水の流れで組み立てました。平場は所定ピッチでディスクを設置し、風荷重に耐えられるよう確実に固定します。集合住宅の屋上は風の通り道になりやすく、端部・隅角部は特に負荷がかかるので、固定の考え方が重要です。

 シートを敷設していく工程は、ただ広げるだけに見えて実は“精度勝負”。割付を間違えるとジョイントが弱点部に重なってしまうため、立上り・排水・出入口の位置関係を見て、安全な位置に継ぎ目が来るように整えます。既存層や下地に水分が残りやすい現場では、通気・固定の組み合わせが効きます。内部の湿気を逃がしながら、表層はしっかり止水するこのバランスが長寿命化のコツです。

ディスク板設置
ディスク板設置

溶着・端末処理

塩ビシートの要はジョイントの熱風溶着です。温度・速度・押さえ圧が揃って初めて、シート同士が一体化します。またディスク部は誘導加熱(IH)で溶着し、固定点を防水層として確実に閉じ込めます。ここが甘いと、強風時にバタつきや吸い込みの原因になるので、手で触って溶着状態を確認しながら進めました。

塩ビシート熱溶着
塩ビシート熱溶着
塩ビシート繋ぎ目処理
塩ビシート繋ぎ目処理

 立上りは立ち上げシートをきれいに納め、上端は端末押さえ金物で機械的に押さえ込み、最後にシール材で雨仕舞を完成させます。この金物+シールの二段構えが、横殴りの雨や毛細管の吸い上げに効きます。端末は防水の“終わり”であり、漏水の“始まり”にもなる場所。だからこそ、ここは時間をかけて丁寧に仕上げました。

立上りシート溶着
立上りシート溶着
立上り端末金物取り付け
立上り端末金物取り付け
立上り端末シール処理
立上り端末シール処理

立上りの仕上げ工程

ここまでで平場の防水ラインを作ったら、次は立上りの塗膜仕上げです。立上りは動きと汚れが集中するため、所定範囲に立上り用プライマーを塗布して密着の土台を作り、その上にウレタンを塗布して入隅やサッシ下の細部まで連続した膜を形成します。さらに紫外線や摩耗から守るため、仕上げにトップコートを均一に塗り、色ムラ・塗り残しが出やすい端部までしっかり仕上げました。

立上りプライマー塗布
立上りプライマー塗布
立上りウレタン塗布
立上りウレタン塗布
トップコート塗布
トップコート塗布

【関連動画】

完工・歩行環境の復旧とメンテナンス提案

仕上がりは、屋上全体がフラットで清潔感のある面になり、立上り・端末もスッキリ納まりました。今回のように普段から活用されている屋上では、仕上げ後の使い方も大事です。人工芝や鉢を戻す場合は、引きずり傷を防ぐため、ゴムマットや当て板を併用してもらうと防水層がより長持ちします。

施工後①
施工後①
施工後②
施工後②
施工後③
施工後③

また、排水口(ドレン)に落ち葉や土が溜まると水溜まりができ、どんな防水でも寿命が縮みます。目安として、台風後や落葉シーズンにドレン清掃、年1回の目視点検(端末のシール切れ・浮き・傷チェック)をおすすめしています。防水は「施工して終わり」ではなく、「上手に付き合って長持ちさせる」もの。今回も住民の皆さまの生活を邪魔しないよう配慮しながら、しっかり品質優先で仕上げました。

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