長年の漏水トラブルを解決 横浜市中区の屋上防水改修で選ばれたサラセーヌQV工法とは
横浜市中区にある築28年の鉄筋コンクリート造二階建ての建物で、長年にわたって悩まされてきた屋上の漏水問題に取り組んだ工事がありました。
建物のオーナー様は何度も繰り返される雨漏りや、そのたびに業者によって行われた対応が本当に正しかったのか、不信感と不安を深く抱えていらっしゃいました。
今回ご相談をいただいた際には、過去の施工で何が起きていたのか、根本的な原因を明らかにするところからスタートしました。
断片的な補修が積み重ねた「不具合の連鎖」
現地調査の結果、屋上の既存防水層は、元々のアスファルト系防水の上に異なる種類の防水材が複数重ねられている状態でした。
各層の接着状態は不均一で、いずれも下地処理が不十分なまま施工されていたため、それぞれの防水材が互いに引っ張り合うような力を発生させていたのです。
その結果、防水層の一部が波打ったり、立ち上がり部分が剥がれたりする現象が顕著に表れていました。
特にシートの端部ではガラス繊維の補強層が露出しており、ドレン付近では排水勾配が機能せず水が滞留している跡も確認されました。
笠木にはそもそも防水処理が施されておらず、コンクリート躯体との接点から雨水が内部へ侵入した痕跡も明らかでした。こうした状態が、漏水を再発させる根本的な原因となっていたのです。
表面的な補修ではなく「総撤去」という選択
ここまでの状態を確認した段階で下した判断は、「全ての防水層を撤去して、一から再構築する必要がある」というものでした。表面だけを補修しても、内部で破断が進行していれば、時間の問題で再び漏水が発生することは避けられません。
部分的な補修を続けるよりも、最初にしっかりと土台からやり直すことで、長期的に安定した防水性能を得られると確信しました。総撤去工事とは、既存の防水層をすべて剥がし、鉄筋コンクリートの下地が完全に露出するまで作業を行うものです。
この方法は、工事中に雨が降れば直接浸水してしまうリスクがあるため、天候や仮防水措置、作業工程の管理に高度な判断が求められます。また、撤去にかかる手間や廃材処理費も含めて、施主様にとっては大きな決断となります。
しかしながら、この現場においては、総撤去以外の選択肢では根本的な解決には至らないと判断しました。



剥がして見えた「防水層の複雑な積層構造」
実際に既存の防水層を剥がしてみると、その下から現れたのは、まるでミルフィーユのように層を重ねた防水材の残骸でした。一層目はアスファルト系防水材、二層目には塩ビシートが貼られ、その上にゴムシートの防水材が断続的に施工された跡が残っていました。
さらに、固定用のアンカーや押さえ金物も適切に処理されておらず、防水層の構造そのものに無理があることが明白となりました。こうした異なる素材を重ねた防水構成では、温度変化や建物の動きに対して各層が異なる伸縮を示すため、応力が集中して剥離や亀裂の原因になります。
加えて、下地処理が行われていなかったため、素材同士の密着力が弱く、わずかな動きで層間剥離を起こしてしまう構造となっていたのです。

サラセーヌQV工法によるウレタン塗膜防水の再構築
今回採用した防水工法は、密着型ウレタン塗膜防水であるサラセーヌQV工法です。この工法は、ウレタン樹脂を二層に塗り重ね、その間に補強クロスを挟み込むことで、柔軟性と耐久性を両立した防水層を形成するものです。
塗膜はコンクリート下地にしっかりと密着し、建物の微細な動きにも追従できるため、将来的な剥離やクラックのリスクを大幅に軽減できます。また、立ち上がりや排水ドレン周辺といった複雑な部位にも、塗り込みによって均一な防水層を形成できるため、施工後の信頼性が非常に高まります。
今回は、下地処理からプライマー塗布、主材塗布、トップコート仕上げまで、すべての工程を丁寧に積み重ね、再発防止につながる施工を徹底しました。



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細部の処理にこそ、防水の真価が問われる
今回の施工は、単なる補修ではなく、十年以上にわたり繰り返されてきた漏水の歴史に、終止符を打つための取り組みでした。建物のオーナー様は、屋上の状態を日常的に確認されていたからこそ、過去の失敗とその原因に強い関心を持たれていました。
「今度こそ本当に大丈夫だろうか」という気持ちを胸に抱きながら、工事を見守ってくださっていた姿が、今でも印象に残っています。完成後には、「これでやっと安心できる」とのお言葉をいただき、この上ない喜びを感じました。

防水とは、見えない部分を守る仕事です。しかし、見えないからこそ、丁寧さと誠実さが何よりも問われます。今回のような難しい現場だからこそ、真価が試されたと感じています。
防水のことでお困りなことがありましたら、お気軽にご相談ください。建物の状態に合わせた最適な工法のご提案をさせていただきます。
