排水性能と下地の見極めが決め手に!横浜市港北区の屋上防水改修工事で見えた職人の判断力と技術力
防水工事というのは、ただ新しい材料を塗ればよいという単純な作業ではありません。建物の状態を正しく見極め、過去の施工の影響を把握しながら、最適な手順と工法で仕上げていく必要があります。
今回ご紹介するのは、排水ドレン周辺にいくつもの問題を抱えた屋上防水の改修現場。目に見えない不具合に職人がどう対応し、どんな工夫を重ねたのか、その技術と判断の軌跡を詳しくご紹介します。
ドレン皿の不具合と防水層への影響
屋上防水工事の中でも、特に重要な部分が排水ドレン周辺です。ここに問題があると、どんなに優れた防水材を使っても雨水が正しく排出されず、防水層に大きな負荷がかかってしまいます。
今回の現場でまず目を引いたのは、既存のドレン皿が撤去されずに残っていたことです。このドレン皿は鋳物製で、取り外しは容易な構造でしたが、長年の放置により軽くコーキングで固定されているだけの状態でした。そのため、防水層との密着性は極めて悪く、皿があることで防水層が平坦に形成されず、段差が生じてしまっていました。
この段差は防水層の弱点となり、そこから水が浸入するリスクが非常に高まります。防水層は連続性が命ですが、このような異物や段差があると、材料の剥がれやクラックの発生を招くことになるため、ドレン皿の存在は見過ごせない問題でした。

ドレン皿撤去と不陸調整の丁寧な施工
まず職人は、この不具合の原因となるドレン皿を丁寧に撤去しました。撤去後は、皿の下にあった下地の状態をしっかりと確認。下地に凹凸があったり劣化が進んでいる部分は、樹脂モルタルで平滑に補修しました。
樹脂モルタルはエポキシ系やポリマーセメント系の材料で、耐久性が高く防水層との密着性にも優れています。特に排水周辺のように雨水が集中する部分では、下地を平滑に整えることが防水性能向上の要となります。

排水性能を高める特注蛇腹ホースの採用
次に注目したのは、排水ホースの仕様です。現場では排水口径は適切に選定されていましたが、ホースの長さが不足しており、排水の逆流や滞留のリスクが高い状態でした。ホースが短いと、排水がうまく流れず、水が溜まることで防水層への負荷も増大してしまいます。
そこで、1メートル以上の特注蛇腹ホースを用いることで、排水性能を確保しました。蛇腹ホースは柔軟性があり、設置箇所に応じて曲げやすく排水経路を確保しやすいのが特徴です。特注により長さを確保することで、水がスムーズに流れる環境を作り出しました。


柔らかい鉛製メザラの手加工で密着性を確保
ドレンとホースの接続部に使用されていた鉛製のメザラも重要なポイントでした。鉛は非常に柔らかい金属で、変形が容易です。そのため、工場で完璧な形状に加工されることは少なく、現場での手加工が求められます。
職人はゴムハンマーを使い、メザラの形状を微調整しながら排水口の周囲にしっかり密着させる工夫を行いました。これにより、隙間なく仕上がり、排水時の水漏れリスクを大幅に軽減しています。

ドレン設置の様子
メザラの設置が完了し、その周囲に補強のメッシュシートが貼られ、上から防水材が丁寧に塗布されているのが分かります。この防水材が、下地の鉛製メザラと既存防水層にしっかりと密着し、新たな防水層を形成しています。
このような下地の状況から、実はその下にゴムシート防水が重ねられた複合構造であることが、職人の経験により判明しました。ゴムシート防水の「折りたたみ貼り」と呼ばれる特徴的な貼り方や、わずかな段差・浮きの有無を見極める技術は、単なる表面観察だけでは得られません。多くの施工経験を通じて培われた勘と知識の積み重ねが重要です。
この複合構造の場合、補修時にゴムシートを不用意に剥がすと広範囲に剥離が拡大し、かえって施工の負担や費用増加を招く恐れがありました。そのため、剥がす範囲を最小限に抑え、劣化箇所や破断部分だけに的を絞った処理を施しました。ドレン周辺がしっかりと補強され、防水層が形成されることで、水分の滞留を防ぎ、防水層の長寿命化に貢献します。


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ドレン改修は防水工事の“命綱”
今回の屋上防水改修では、排水ドレンの不具合を見逃さず、丁寧なドレン皿の撤去、下地調整、排水ホースの長さ確保、柔軟な手加工による密着性の確保といった細やかな対応が求められました。
防水工事は、材料選定や塗布の技術だけではなく、排水の流れを確実に守ることが最大の使命です。いくら防水層が完璧でも、排水がうまくいかなければ防水機能は長く保てません。
職人の経験に裏打ちされた見極めと判断力、そして手間を惜しまない施工姿勢が、この現場の成功につながりました。これから防水工事をご検討の方は、ぜひドレン周辺の状態にも目を配ってみてください。ドレンや防水層など気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。