三度の防水工事でも止まらなかった雨漏り 横浜市港北区の現場で徹底的に見直した基礎工事とは

今回ご紹介するのは、横浜市港北区にある築28年・RC造2階建ての建物での屋上防水工事です。お客様からは、「何度防水工事をしても雨漏りが止まらない」とご相談いただきました。すでに過去に3度、防水工事を実施しているにもかかわらず不具合が続いているとのことで、私たちも状況を慎重に確認しながら対応する必要がありました。

現地調査を進める中で見えてきたのは、異なる防水材が重ねて施工されている、いわゆる異種防水層の積層による施工不良でした。今回は、その撤去から下地調整、プライマー塗布までの工程を、実際の現場の様子とともにお伝えします。

目次

雨漏り再発の原因は「異なる防水材の重ね塗り」だった

現地調査では、既存の防水層をめくることでその実態が明らかになりました。表面には塩ビシート防水が見られ、その下にはウレタン塗膜防水、さらにその下にはゴムアスファルト系の防水材という、異なる防水層が3層重ねて存在していました。

これらの防水材は、素材や硬化の特性が異なるため、層同士の密着性が非常に悪く、剥離や浮きが生じやすくなります。その結果、防水層の内部に水が浸入しやすくなり、結果として内部から雨漏りが発生していたのです。

部分補修や重ね塗りを繰り返しても、根本が改善されない限り、雨漏りは再発してしまいます。そこで今回は、既存の防水層をすべて撤去し、下地から作り直す「基礎からの工事」を実施しました。

すべてを剥がし、コンクリート素地まで戻す

工事の第一歩は、既存の防水層とその下にある異種層をすべて撤去すること。まずは屋上の端部に取り付けられていた金物(鋼製見切り)や電気配線・設備を一時的に取り外します。これは、防水層を建物の端まで連続して密着させるための大切な工程です。

次に、表面の塩ビシートを短冊状にカットし、少しずつ剥がしていきます。さらに、その下にあるウレタン塗膜、防水アスファルト層についても、スクレーパーや電動剥離機を使って手作業で丁寧に除去しました。最終的には、押さえコンクリートが露出するまで既存の層をすべて撤去。この時点でようやく、防水工事の「土台」に向き合える状態になりました。

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カチオンモルタルで平滑な下地を作る

次に、不陸(ふりく)調整と呼ばれる下地の補修作業を行います。これは、屋上面の凸凹や勾配不良を修正し、防水材が均一な厚みで施工できるようにするための工程です。

今回の現場では、過去の重ね施工によって表面が大きく波打っており、水が溜まりやすい箇所も見られました。そこで、カチオン系樹脂モルタルを使用して下地を平滑に整えます。

立ち上がり部にはローラーを使って塗布し、平場部分には金鏝で「しごき仕上げ」を施して均一に仕上げました。この工程をきちんと行うことで、防水層が適正な厚みで安定して施工できる状態が整います。

プライマー塗布 防水層との密着を確実にする

不陸調整が完了し、モルタルが十分に乾燥した後は、プライマーの塗布作業に進みます。プライマーとは、下地と防水材(今回はウレタン系)との密着性を高めるための下塗り材で、これを省略または不均一に塗布すると、防水材の剥がれや膨れが発生するリスクが高まります。

使用するのは、ウレタン防水専用の一液性プライマー。ローラーを使って平場・立ち上がり・入隅まで丁寧に塗布しました。この日は風があり、気温も高めだったため、乾燥速度と塗りムラに注意しながらの慎重な作業となりました。

こうして、ようやくウレタン防水層を施工するための“本当の下地”が完成しました。

見えない工程にこそ職人の真価が問われる

今回の防水工事は、見た目の施工以上に「下地づくり」の精度が求められるものでした。

3回の失敗により、お客様の信頼も不安も大きくなっていた中で、私たちが最も大切にしたのは、見えない部分に手を抜かないことです。

防水材の種類や施工方法だけでなく、それを支える「下地の状態」が整っていなければ、どんなに高性能な材料を使っても効果は長持ちしません。

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防水工事の成功は下地処理で決まる

横浜市で行った今回の屋上防水再施工では、防水層の撤去から素地清掃、不陸調整、プライマー塗布まで、一つひとつの工程を丁寧に積み重ねました。

このような“基礎づくり”を正しく行うことで、次の工程となるウレタン塗膜防水(サラセーヌQV工法)の性能が最大限に発揮されます。

「何度工事をしても雨漏りが止まらない」という方は、見えない部分、つまり“下地”の状態が本当に整っているのかを、まず疑ってみることが大切です。

次回は、いよいよウレタン防水層の施工と仕上げの工程をご紹介します。防水の本質は「見えない部分」で決まります。防水工事をご検討の方、お住まいの防水層が気になる方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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