屋上からの雨漏りに対応した防水改修 横浜市西区で実施した通気緩衝工法の施工事例
横浜市西区にあるS造3階建ての商業ビルにて、屋上の防水改修工事を行いました。
ご相談いただいたのは、建物のオーナー様から。「天井に雨染みができてきた」とのことで、現地を調査したところ、既存のアスファルト防水層に劣化が見られ、排水設備の不具合も重なって雨水が建物内部へ浸入していたことが判明しました。
今回の工事では、既存のアスファルト防水の上から施工できる通気緩衝工法によるウレタン塗膜防水を採用しました。実際の施工内容を工程ごとにご紹介いたします。
目次
現場調査と劣化の原因
既存の防水層はアスファルト防水の露出仕様で、床面には保護モルタルが施工されていました。劣化により表面は硬化・ひび割れを起こし、特にドレン（排水口）周辺の傷みが激しい状態。雨水がドレンの隙間から入り込み、建物内部の石膏ボードにまで浸透して腐食を招いていました。
また、屋上立上り部の防水層も劣化が進み、防水性能が十分に発揮されていない状態でした。目に見える破損は限定的でも、長年の雨風や紫外線の影響が蓄積され、見えない内部にダメージが広がっていることが多くあります。
通気緩衝工法によるウレタン防水を採用した理由
今回の防水改修工事では、通気緩衝工法によるウレタン塗膜防水を採用しました。
通気緩衝工法は、既存下地に残留した湿気や水分を逃がす通気層を設けることで、防水層の膨れや剥離を防ぐことができる工法です。特に今回のように、既存防水がアスファルト防水だった場合、その下に水分が残っていることも少なくありません。そうした下地条件に対して、直接新しい防水層を重ねると、不具合が発生するリスクが高くなります。
そこで通気緩衝工法を採用することで、下地の状態に左右されにくい安定した防水層を形成し、長期的な防水性能の維持を目指しました。また、改修後の点検や補修もしやすく、将来的なメンテナンス性にも優れた選択といえます。
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洗浄とドレン周辺の補修
まずは屋上全体を高圧洗浄機で丁寧に洗浄。ただし近隣への飛散を考慮し、圧力を弱めに設定して実施しました。続いて行ったのが、雨漏りの主原因であるドレン周辺の処理です。既存のドレンは硬く固着しており、石頭ハンマーやバール、ハツリ機を使って慎重に撤去しました。
ドレン周辺の防水層やモルタルを整形し、回収ドレンを設置するための下地を平滑に整えました。この工程は地味ながら、雨水の排出を安定して維持するための要となる作業です。
エラスタイトと目地の処理
既存のエラスタイト（目地材）も劣化が進んでおり、表面の樹脂部分のみを撤去。内部のスポンジ材は状態が良好だったため、今回は再利用する判断としました。
アスファルト防水との相性を考慮し、カチオン系樹脂モルタルを使用して下地調整を実施。立上りには水性のアンダープライマーを併用し、油分による反応（ブリード）を防ぐ処置も行いました。
また、シーリング部の上には柔軟性のあるモルタル材を使用し、硬い材料との相性にも注意を払っています。
通気緩衝シートと脱気筒の設置
下地処理が完了したら、通気緩衝シート（自着式）を屋上全面に貼り付けていきます。このシートは下地との間に空気層を作ることで、湿気が防水層に悪影響を与えるのを防ぎます。
シートは端部から3～5cmの間隔を空けて貼付け、角には密着させないようにするのが施工上のポイントです。シートの端部はエンドテープでしっかりと固定し、風や熱の影響を受けにくい状態に整えました。
また、適切な位置に脱気筒を設置。目地と通気層の接点を考慮して配置し、内部からの湿気を効率よく外へ逃がす仕組みをつくりました。
ウレタン塗布とトップコート仕上げ
通気緩衝シートの施工後、立上り部にウレタン防水材を一層目として塗布。角や入隅は特に雨水の侵入リスクが高いため、塗りムラのないよう丁寧に仕上げました。
次に、平場全体にウレタン防水材を2層に分けて塗布。これにより、規定の膜厚を確保し、防水層全体に均一な強度を持たせます。
シートのジョイント部には「捨て塗り」と呼ばれる補強処理を行い、防水層の連続性と耐久性を高めています。最終仕上げにはトップコートを全面に塗布。紫外線や摩耗から防水層を保護し、長期的な性能維持を図ります。
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見えない部分こそ丁寧に
今回の横浜市西区の工事では、劣化したアスファルト防水に通気緩衝工法を組み合わせることで、建物の構造に無理をかけずに確実な防水改修が実現しました。
雨漏りの原因を特定し、それに合った工法を選定し、目に見えない部分まで丁寧に処理することが、防水工事の本質だと私たちは考えています。
もし建物の屋上で「雨漏りかもしれない」と感じることがあれば、それはすでに防水層が限界を迎えているサインかもしれません。改修のタイミングを見極め、信頼できる工事を行うことが、長く安心して建物を使うための第一歩です。
雨漏り・防水に関するご相談はお気軽にご連絡ください。専門の視点から、建物に最適な改修方法をご提案いたします。