雨漏りに悩む施主様の想いと、屋上防水改修工事への第一歩 その4

築30年のALC造3階建て建物の屋上において、既存のゴムシート防水から塩ビシート防水(機械固定工法)への改修工事を行いました。
本記事では、塩ビシート防水の「機械固定工法」に焦点を当て、施工のポイントを詳しく解説します。機械固定工法は、下地との密着性が不要なため、通気性が確保しやすく、既存防水層の影響を受けにくいメリットがあります。
しかし、固定金具の適切な設置やシートの引張強度を十分に考慮する必要があり、施工精度が防水性能に直結する工法でもあります。
塩ビシート防水(機械固定工法)の特徴
塩ビシート防水は、高い耐候性・耐久性を持ち、既存の防水層の影響を受けにくいメリットがあります。特に機械固定工法は、下地に直接密着させず、ディスク固定によってシートを保持するため、建物の動きや温度変化による膨張収縮に追従しやすく、通気性を確保できる工法です。
しかし、固定ディスクの間隔やシートの張力管理、ジョイント部の溶着処理を適切に行わなければ、強風時のシート剥離や水の浸入リスクが高まります。そのため、精度の高い施工が求められる工法でもあります。

ディスク設置と機械固定
(1)ディスク用穴あけ
まず、図面に基づき、ディスク設置位置を正確にマーキングし、電動ドリルを用いて下地に穴を開けます。
穿孔深さと直径は指定通りに施工し、アンカーの固定強度を確保することが重要です。
穴の位置がズレると、固定ディスクのスパンが乱れ、シートの張力が不均一になってしまう恐れがあります。

(2)固定ディスク設置
開けた穴にアンカーを挿入し、ディスクをビスでしっかり固定。ディスクは、塩ビシートを機械固定するための重要な金物であり、強風時の負圧に耐えられる強度が求められます。
通常300~500mm間隔で設置し、風圧が強い場所(建物の端やコーナー)は密度を上げて補強します。
ディスクの固定が甘いと、後にシートが浮いてしまうため、全てのディスクが確実に固定されているかチェックする。

塩ビシート敷設と固定
(1)シートの展開と仮置き
塩ビシートは、長さ・幅を計算してカットし、まず仮置きします。風が強い日は、シートが飛ばされないように重りを置きながら作業することがポイントです。
施工中にシートがヨレたり、シワができないよう慎重に調整しながら行います。仮置きの段階で寸法誤差を確認し、必要なら再調整し直します。
(2)短辺部の固定
機械固定工法では、短辺(シートの端)から順番に固定していくのが基本になります。シートをディスクに被せ、専用のプレートで固定。
固定時のテンション(張力)が均等になるように調整し、シートの浮きやたるみを防きます。短辺部を固定しないまま長辺を処理すると、シートが波打ったりシワになりやすいため、慎重に施工していきます。
(3)長辺部の固定
短辺の固定が完了したら、長辺部分の施工に移ります。ディスクに沿って、専用の押さえプレートで確実に固定。
シートの引張強度を最大限に活かすため、ピンと張りながら施工します。熟練の職人であればスムーズに引き込めるが、未経験者が施工するとたるみが生じる可能性が高い難しい作業です。

ジョイント部(継ぎ目)の溶着処理
機械固定工法では、シート同士のジョイント部分を「熱融着」処理し、一体化した防水層を形成します。
(1)溶着前の準備
ジョイント部にゴミやホコリがないか確認し、清掃。シートの重ね代(ジョイント幅)は50~100mmが一般的。適切な幅を確保し、シール不良を防きます。
(2)熱融着作業
専用の熱風溶着機(ホットエアーガン)を使用し、450~550℃の熱で圧着。溶着作業は「適切な温度」と「一定のスピード」が重要です。
温度が低すぎる → 接着不良の原因に。
温度が高すぎる → シートが焼けてしまい、防水機能が損なわれる。
ヘラで圧着部を押さえながら、均一に融着していきます。
(3)仕上げ確認
溶着後、ジョイント部にヘラを差し込み、接着強度を確認します。溶着不良があれば、再度熱を加えて補修。
端末部・立上り部分の処理
端末部は、防水の要となる重要ポイントです。特に立上り部分や取り合い部は漏水リスクが高いため、慎重な施工が求められます。
(1)端末部の押さえ金物設置
端末部には専用の金物を設置し、固定強度を確保します。金物のジョイント部には、シーリング材を充填し、防水性を向上させます。
(2)立上り部の補強
シートを立上り部に巻き込み、補強テープを貼った上で熱融着処理を行います。取り合い部分(壁との接点)は、シール処理をしっかり施し、水の侵入を防ぎます。
6. 施工後のチェックと仕上げ
(1)溶着部の点検
溶着部の接着強度を確認し、不完全な箇所があれば補修。目視だけでなく、専用の検査ヘラを使用して確実にチェックを行っていきます。
(2)最終仕上げ
シート表面の清掃を行い、汚れや異物を除去。防水層全体を最終確認し、問題がなければ施工完了です。


まとめ
塩ビシート防水(機械固定工法)は、下地の影響を受けにくく、通気性を確保できる利点がありますが、固定ディスクの設置、シートの張力管理、ジョイント部の溶着処理など、精密な施工が求められる工法です。
各工程を適切に行うことで、長期間にわたる防水性能を確保できます。施工後の点検を徹底し、細部までこだわることが、高品質な防水工事の鍵となります。