横浜市中区で脱気筒撤去と再密着処理により湿気トラブルを防いだ防水改修の実例

今回は、前回のブログの続きでもある横浜市中区にある築18年の2階建て施設で行った、屋上防水改修工事の様子をご紹介します。施工範囲は屋上全面、既存防水層は「改質アスファルトシート防水」でした。
現場では火気厳禁であったため、施工は火を使わない「ガムクール工法」を採用しました。常温粘着工法で、大型火器や工具を使用せず施工することができます。脱気筒新設から下地密着処理までの解説をどうぞご覧ください。
既存脱気筒の撤去と、目に見えない劣化の兆し
脱気筒穿設にあたりまず最初に行ったのは、既存脱気筒の撤去です。脱気筒は下地にこもる湿気を逃がすための装置ですが、経年により劣化が進み、本来の機能を十分に果たしていない状態でした。根元から電動工具で慎重に切断し、周囲の防水層も含めてしっかりと処理。
この時点で、目視では小さな膨れや表面の細かい亀裂も確認できました。改質アスファルト防水は18〜20年が耐用の目安とされており、まさにちょうど更新の時期に差しかかっていたと言えます。

脱気筒裏にはコーキング材で捨てシールを
脱気筒の撤去後、裏側には「捨てシール」を打ちました。これは、たとえ防水層の裏側に水が入り込んだとしても、下地へと水分が侵入するのを防ぐための処理です。普段は見えない部分ですが、後々の安心につながる大事な工程のひとつです。

下地の密着にはFXシートを使用
防水層の基盤となる部分には、FXシートを裁断して張り込みました。これは、常温粘着型の自着シートで、しっかり圧着することで下地との密着性が高まり、防水層が浮きにくくなります。後の層を安定して支えるためにも、このシートの施工精度が求められます。

露出仕上げにも対応するガムクールキャップを張り込み
上部にはガムクールキャップを施工しました。このシートは、表面に細かい骨材が吹き付けられており、耐久性・耐摩耗性ともに高く、露出防水としても使用可能なタイプです。今回は、立ち上がりやドレン周りなど、部位に合わせて丁寧に張り込んでいきました。
ドレン付近は形状が複雑なので、必要に応じてシートに切れ目を入れ、密着と防水性能の両立を図ります。細部の納まりこそが、施工品質を左右します。


膨れ処理:切開→炙り→圧着という丁寧な手順
既存の防水層に一部、膨れが見られました。これは下地からの水蒸気が溜まってできるもので、処理を誤ると再発の原因にもなります。
今回はまず膨れ部分を切開し、内部の空気と水分を抜いた後、バーナーで炙って改質アスファルトを柔らかくし、再度密着させる方法を取りました。加熱により元のコンパウンドが再溶解し、しっかりと下地に馴染むように押さえ込むことで再発を防ぎます。



ジョイント・端末部の丁寧な処理
シート同士の継ぎ目や、立ち上がりと平場の取り合い部には、専用のシーリング材(ガムシールなど)を用いて処理。ジョイント部は防水層の中でも特に水の侵入リスクが高い場所なので、コーキング後にヘラで丁寧に押さえ、密着と仕上がりの両方を整えます。


トップコートと押え金物で仕上げ
防水層の保護と美観の向上を目的に、立ち上がりと平場の両方にSPファインカラーというトップコートを塗布しました。施工には9インチローラーを使い、均一に塗り広げることで仕上がりにも差が出ます。
最後に、端部にはアルミ製の押え金物を設置し、ドリルで穴を開けた後、プラグをハンマーで打ち込んで固定。物理的な“めくれ防止”の役割を果たすと同時に、見た目にもすっきりとした印象になります。



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今回の改修工事は、築18年という節目での施工でした。ちょうど防水層の耐用年数と重なる時期で、劣化の初期症状が出始めた段階での対応だったため、大きな被害もなく、最小限の補修で済ませることができました。
改質アスファルト防水は非常に優れた工法ですが、長年の風雨や紫外線で少しずつ劣化は進行します。「まだ漏れてないから大丈夫」ではなく、兆候が見えた段階で手を打つことが、長い目で見て最もコストパフォーマンスの高い選択になります。
横浜市内、特に中区など沿岸地域では、湿気や潮風による劣化の進行も考慮が必要です。屋上防水の点検・改修をご検討の方は、ぜひお気軽にご相談ください。