ウレタン防水

液状のウレタンを塗布するウレタン防水作業

ウレタン防水の概要

ウレタン塗膜防水は、液状で施工するため、硬化後も継ぎ目がなく水密性が高い防水層を形成できます。これにより、漏水の可能性を低く抑えることができます。

また平坦な屋上と違い室外機や看板を設置するための基礎や架台など複雑な部位がある場合、他のシート状態の防水材と比較しても継ぎ目という概念がありません。

液状のウレタンを流し込むウレタン防水作業


また屋上は日中の太陽熱によって温度が高くなり、夜になると冷えるため、昼夜の温度差により下地のコンクリートなどがゆっくり膨張したり収縮したりしていますが、この繰り返しによって微細なクラックが発生することがあります。ウレタン塗膜防水は柔軟性に富んだ伸縮性が高いゴム状になるため、微細なクラックにも追従します。

また屋上は日中の太陽熱によって温度が高くなり、夜になると冷えるため、昼夜の温度差により下地のコンクリートなどがゆっくり膨張したり収縮したりしていますが、この繰り返しによって微細なクラックが発生することがあります。ウレタン塗膜防水は柔軟性に富んだ伸縮性が高いゴム状になるため、微細なクラックにも追従します。

耐久性

耐久性はウレタンの厚みや施工品質にも当然ながら関わってきます。ウレタン防水には「高強度形」と「高伸長形」というそれぞれ二つの特性をもつ材料があります。

高強度は摩耗等に強く高身長形は下地のクラックにも追従するというそれぞれの特徴があります。その特徴を生かし、下地の動きの影響で発生するひび割れに対応させるため1層目に柔軟性がある高身長形を、2層目に歩行による摩耗に対応する高強度形の組み合わせの「タフガイ」という施工仕様で、補強布なしでも補強布を入れた施工よりも耐久性のあるウレタン防水も可能になりました。

高強度形のサラセーヌAと高伸長形のサラセーヌK
高強度形のサラセーヌAと高伸長形のサラセーヌK ※タフガイ仕様

ウレタン防水の中では一番耐久性がある「タフガイ仕様+通気緩衝工法」という工法では15年が一つの目安となります。ただし、メンテナンスとしてウレタン防水の一番表層にあるトップコートを5年ごとに塗布することが推奨されます。
太陽光を主軸とした紫外線のような自然環境にも耐候性のあるフッ素などのトップコート材を一番表層に塗布すれば、ウレタンの伸縮性をそのままに長期間の耐久性を保持できます。

フッ素の場合、ウレタン防水施工後7年経過した時点で表面クラックや膜厚減少などの大きな劣化がないというメーカーのデータもあります。

費用感

現状の屋上のまま施工に取り掛かれるのか、今ある防水層を撤去しなければ施工できないのかなどの現場状況で工法と価格は大きく異なります。基本的に既存防水層が保護コンクリートかウレタンのどちらかの状態からの施工を前提にすると密着工法と通気緩衝工法では大きく異なりますが、おおよそ平場の場合は100㎡あたり80万円~です。

その他アスファルト防水やシート防水などの既存防水層の破れや膨れ等で建物の躯体コンクリートスラブである下地からはがれてしまっているなど劣化状況は様々ですが、そのような既存防水層の劣化が激しい場合は、撤去してからでなければウレタン防水は施工できない場合がほとんどです。
撤去が必要な場合はその分だけ費用が掛かります。

価格(安め)

現状の既存防水層の上からそのまま施工できる状態での場合はコストが安めに抑えられます。例えば現状がウレタン防水でまたウレタン防水などを施工する場合です。

価格(普通)

現状の既存防水層が保護コンクリートなどのような場合、カチオンモルタルやポリマーセメントを塗布して表面を平滑に下地調整をする場合はその分だけ費用が加算されて行きます。

価格(高め)

現状の既存防水層に膨れや剥がれ、極端な劣化がある場合は、既存防水層を撤去してからの施工は撤去費用が加算されて行きます。

施工種類

ウレタン防水は大きく分けて密着工法と通気緩衝工法(絶縁工法)の2種類があります。ウレタン塗膜防水は液状化状態での施工のため下地が平らであることが他の防水工事よりも重要なため下地作りが重要です。

現在屋上の既存防水層がウレタンやシート防水系の場合は下地が平ということが言えるため、高圧洗浄してプライマーやバインダーなどの塗布後にウレタン防水の施工がすぐ可能で密着工法ができます。
既存防水層が保護コンクリートや撤去をしなければならない露出防水層の場合は通気緩衝工法で施工します。

通気緩衝工法

下地シートの上にウレタンを塗布する準備作業

通気緩衝工法

下地には少なからず水分を含んでいるものです。新築の場合はコンクリート打設時の内在水分や、降雨により吸収した水分、改修工事の場合では保護防水層などに長年吸収された水分が存在します。これらの下地水分が、直射日光や外気温の上昇により気化しようとし、新規防水層を押し上げて膨れが発生するといったメカニズムです。

通気緩衝工法では、下地水分の逃げ道を確保するための通気層を形成するためのシートを下地に対して施工し、その上からウレタン塗膜防水を施工するといった流れとなります。熱により気化した水分(水蒸気)は、通気層を通り施工時に設置する脱気筒から排出されます。

施工時に設置された脱気筒から排出される水分



密着工法とは異なり、通気緩衝シートを施工する手間は一つ加わりますが、膨れの不具合を防止できます。また成形ものであるシート状にウレタン塗膜を塗布していくため、凹凸が多いコンクリート下地や既存防水層に直接塗布する密着工法よりも均一な膜厚にて施工が可能です。

また、下地とウレタン防水層の間にシートをかませることで、下地のクラックなどの動きを緩衝することができ、防水層の破断等の不具合を抑制できます。デメリットとしては、シートを張り付けていく工程が発生するため、ウレタン防水の特徴である、複雑な形状の下地や狭い箇所への施工が困難になります。

密着工法

密着工法によって施工された屋上の様子

通気緩衝シートを敷かずそのままウレタン防水をする工法のことです。高圧洗浄などでほこりや汚れなどを除去し、プライマー塗布をしてからウレタン防水施工していきます。密着工法は、その名の通り既存の防水層に直接ウレタン防水材を塗布していく方法です。

デメリットとしては下地からの水分による膨れが発生しやすいため、既存が保護防水やアスファルト防水などは適用外となります。

適用下地

ウレタン防水を適用する前の下地

現状の屋上防水層にウレタン防水を適用する際の下地としての考慮事項は、既存の防水層の種類と状態に大きく依存します。ウレタン防水を既存の防水層の上に施工する場合、互換性、接着性、および既存の防水層の相性も重要です。

以下は、一般的な既存の防水層の状況と、ウレタン防水を適用する際の注意点です。

ウレタン防水と既存防水層との相性

既存がアスファルト系防水

既存の防水層(アスファルト防水)

既存防水層がアスファルト防水の場合、既存アスファルトからの成分移行や、新規ウレタン防水層から既存アスファルト層への成分移行により、劣化の進行が早まりクラックが入りやすくなったりするため、通気緩衝工法を採用します。

既存がシート防水

既存の防水層(シート防水)

既存がシート防水の場合は密着工法が可能ですがウレタン防水層の可塑剤等の重要性分が劣化した塩ビシートに吸収され、本来の機能を発揮できなくなり、耐久性が低下したりする懸念があります。また既存の塩ビシート等防水層と下地の接着度に関して、耐風圧性に問題がないかの調査も勘案します。

既存がウレタン防水

既存の防水層(ウレタン防水)

既存ウレタン塗膜防水層の撤去も必要なく、既存のウレタン防水層の上に新たに施工する場合は最も相性が良く密着工法も可能です。表面の老化や汚れを高圧洗浄などで除去し、プライマー処理後ウレタン防水を施工していきます。ただ膨れなどがある場合は切開をするなどして乾燥養生をし補修後に通気緩衝工法での施工が一番ベストです。

既存が保護コンクリート

既存の防水層(保護コンクリート)

ひび割れや伸縮目地などの劣化等を補修し下地調整後に通気緩衝工法を採用できます。目地はシール材で補修し、他の平場に対して必要がある場合はポリマーセメントなどでの下地処理後施工していきます。

施工方法・工期・施工上や環境上の注意点

塗りにくい箇所をハンドローラーでウレタン塗布する作業

屋上防水の場合は主剤と硬化剤の2種類の液体を混ぜ合わせる2液成分形のウレタン材料をローラーや小手などを使用し塗布していきます。塗り広げられた塗膜材が時間経過とともに硬化し、膜を形成することで防水機能を発揮します。

主剤と硬化剤を混ぜ合わせる様子


1液タイプの材料は空気中の湿気と反応して硬化するため、主剤と硬化剤を混ぜた使うような混錬工程がなく手間が省けますが2液タイプのように強制的にウレタン結合を形成させるタイプと比較して、硬化時間が遅かったり塗膜表面から順に硬化していくので、皮張現象が起こるといった傾向もなくはありません。



ウレタン防水施工時、平場以外の立ち上がり部など動きが多い場所には補強布を入れてからウレタンを塗布することが一般的です。補強布を入れる目的としては、適切な膜厚管理とウレタン皮膜の補強です。実質的な塗膜の物理的強度にも大きく寄与してくるため、架台基礎部などの適材適所に補強布を入れます。



太陽光、気温の変化、雨水、化学物質などの外部要因は、ウレタン防水の劣化や効果の低下を引き起こす要因です。特に紫外線は、ウレタンの劣化を促進するため、適切なUV安定剤の添加や表面保護コーティング(トップコート)の施工が重要です。

紫外線から保護するトップコート塗布作業



定期的なメンテナンスや点検もウレタン防水の耐久性を維持するために重要です。クラックや剥がれ、変色などの異常が早期に発見され、修復されることで、防水性能を長期間にわたって確保することが可能です。

材料・道具など

ウレタン防水作業のための道具

「サラセーヌ」「ダイフレックス」「田島ルーフィング」などウレタン防水材メーカーは各社あります。
材料種類では1液と2液成分形の2通りの種類があり、さらに一番表層に塗るトップコートではフッ素塗料や遮熱機能を持った材料などがあります。

現場の状況によって施工方法が変わりますが、弊社として多用しているものは、AGCポリマーのサラセーヌタフガイやダイフレックスDSカラーというウレタン塗膜防水の中でもトップクラスの耐久性を誇る材料を使用することが多いです。

タフガイ施工システム

タフガイ(堅鎧)システムは、AGCポリマーが提供するサラセーヌシリーズの一部で、QV工法とAV工法だけでなく密着工法にも採用できるウレタン防水施工方法です。このシステムの核となるのは、「JIS高強度形ウレタン」と「JIS高伸長形ウレタン」の二種類のウレタン素材を重ねて塗布することにより、非常に高い衝撃耐性と伸び率を実現することです。

具体的には、高伸長形ウレタンであるサラセーヌEZが下地の収縮による動きに追従してひび割れを防ぎ、サラセーヌAZが表層からの衝撃から守ります。補強布省略でも驚異的な下地ひび割れ追従性能と強靭な防水層を形成します。

横浜市と川崎市のような工業地帯が多い地域では、「神奈川県生活環境の保全等に関する条例」に沿った工事が推奨されています。
また塩ビシート防水の機械固定工法のようなドリル騒音も発生しない、アスファルト防水と異なり火器も使用しないため、大気汚染に配慮された工法というだけでなく、マンション居住者にとっても優しい工法と言えます。

Q&A

施工後のウレタン防水(屋上)

ウレタン防水の寿命はどれくらいですか?

ウレタン防水の寿命は、施工条件、環境要因、メンテナンスの頻度によって異なりますが、一般的には約10年から15年程度とされています。5年ごとの定期的な点検と適切なメンテナンスを行うことで、さらに長持ちさせることが可能です。紫外線や機械的なダメージから保護するためのトップコートを追加することも、耐久性を向上させる一つの方法です。

ウレタン防水工事に最適な時期はありますか?

ウレタン防水材は湿度や温度に敏感であるため、適切な施工条件が重要です。理想的な施工時期は、比較的乾燥しており、気温が5℃以上25℃以下の安定した気候の時期です。高湿度や雨の期間は避けるべきで、また、極端に高温や低温の条件下では材料の性能が低下する可能性があります。そのため、春や秋の穏やかな気候が最適とされています。

ウレタン防水と他の防水方法との主な違いは何ですか?

ウレタン防水は、その高い伸縮性と優れた密着性によって、多くの建築物の屋上やバルコニーに適用されます。他の防水方法と比較して、ウレタン防水は施工が比較的簡単で、複雑な形状や細部にも柔軟に対応できる点が特徴です。また、シームレスな防水層を形成するため、水漏れのリスクを最小限に抑えます。一方で、シート防水やアスファルト系防水は物理的な防水層を形成しますが、施工が複雑であったり、接合部での漏水リスクが高まることがあります。