塩ビシート防水の概要
塩化ビニル樹脂系のシート(合成高 分子系ルーフィングシート)を貼り合わせて施工する防水工法です。ゴム製のシートよりもやや厚く紫外線や熱に強いため耐用年数も長く軽い歩行も可能です。塩化ビニル樹脂系シート防水の施工には、接着工法と機械的固定工法がありますが横浜防水職人の改修工事では機械的固定工法が主流です。
50年以上にわたる品質改良と施工技術の実績もあるため信頼性の高い防水材です。本来は傷みが進んで撤去しなければならない既存防水層の上から施工可能な防水材としても軽量な材料で、撤去廃材も少なく環境的にもコスト的にやさしい施工です。
耐久性
塩ビシートは、1.0mmから2.0mmなどの厚さがあり、耐久性にも差があります。塗膜防水のように職人の技術によって材料の厚みが変わることがなく、均一なため材料的な不良要素はありません。データ上でも15年以上の長期間にわたる耐久性のエビデンスがあります。
さらに、塩ビシート防水は溶着によってジョイント部を一体化させるため、経年劣化による剥離のリスクが非常に低いです。同じシート系であるゴムシート防水はジョイントを接着剤で接合しますが、紫外線や熱などの影響で接着部分が劣化しやすい傾向があります。
一方、塩ビシート防水は熱融着によって強固に接合されるため、耐久性に優れています。これにより、ジョイント部の剥離や漏水のリスクが大幅に低減され、長期にわたって安心できる防水層と言えます。
他の防水材は伸縮や水をはじく性質・成分から防火性能が劣ることが多いですが、塩ビシート防水は自己消火性を持ち、延焼のリスクが少ないため、防災の面でも安心できる防水材と言えます。
費用感
既存の防水層を撤去せずに上から新しいシートを被せる「かぶせ工法」を採用することで、廃材の処理費用や工期の短縮が可能で総合的に費用を抑えることができます。
加えて、厚み・幅・長さが一定のシートは、無駄なく効率的に施工することが可能であり施工コストの削減にもつながります。塩ビシート防水は長期にわたる耐久性とメンテナンスの容易さを考慮すると経済的です。
施工種類
改修工事では、既存防水層の撤去不要が可能な機械固定が主流です。
機械固定式
塩ビシート防水の機械的固定工法は、塩ビシートを躯体に全面接着せず、固定金具で部分的に固定する方法です。この工法は、プライマーや接着剤などの溶剤をほとんど使用しないため、VOC(揮発性有機化合物)の排出が少なく、環境に優しい点が特徴です。また、下地の乾燥度合いや状態に関わらず施工が可能であり、下地処理の手間やコストを削減することができます。さらに、固定金具を使用することで施工が迅速に行え、工期の短縮が可能です。特に大規模なプロジェクトや急ぎの工事に適しています。
この工法は、風圧や振動、衝撃に対して高い耐久性を持ち、特にディスクを併用することで固定部にかかる水平力を大幅に軽減し、長期間にわたって高い防水性能を維持することができます。また、既存の防水層を撤去することなく新しい防水層を重ねて施工することができるため、廃材の発生を最小限に抑えることができ、既存防水層が劣化している場合でも部分的に修繕しながら新しい防水層を施工することができるため、コスト削減にも寄与します。
さらに、機械的固定工法は風の影響を受けやすい地域や高層建築物に適しており、強風によるシートのバタつきを防ぐことができます。下地が湿っていても施工が可能なため、天候に左右されにくい点も大きなメリットです。このように、機械的固定工法は効率的でコスト効果の高い防水方法であり、多くの現場で採用されています。
密着工法
塩ビシート防水の密着工法は、塩ビシートを下地に全面的に接着する方法です。この工法では、一液型ウレタン接着剤や専用の接着剤を使用して、塩ビシートを下地にしっかりと固定します。
密着工法の特徴として、接着剤を使用することでシートと下地が一体化して得られる強力な接着力です。これにより、強風や台風などの厳しい気象条件にも耐えられます
適用下地
接着工法の場合は既存防水層や下地との動きに追従できず塩ビシートのずれや剥離、膨れたりすることがあるため、横浜防水職欄では既存防水層の影響を受けることの少ない機械固定式で施工します。
機械的固定式は新設する塩ビシートの間に絶縁シートを敷きこむため、既存防水層に触れることもなく躯体の動きに対しても影響を受けることがなく施工できます。
また塩ビは化学物質にも強く、保護コンクリート中に含まれる成分などの影響を受けることがないため、立ち上がりの防水層は撤去して接着施工が可能です。
平場に関しては固定ディスク盤をビスやプラグアンカーで止めるため、屋上に吹き込む風圧力によって発生する引き抜き力にも対抗する強度が必要です。
既存防水層下に厚みのある断熱材が敷かれていたり、躯体下地がALC板などでも浸透性エポキシ樹脂と固定用アンカービスを併用した固定などでも施工可能ですが、アンカーの長さや強度を考慮しても効かないような場合には採用できない工法となります。
ウレタン防水と既存防水層との相性
既存がウレタン防水
ウレタン塗膜防水の場合の上から塩ビシート防水を施工するメリットよりも、コスト的にもウレタン防水をするメリットが上回るため塩ビシートは基本選択肢から除外されます。
既存がアスファルト系防水
アスファルト系成分の化学的影響や密着性の問題から機械固定式が採用されます。
既存がシート防水
シート防水の場合で撤去しない場合は密着工法、機械固定式それぞれ採用できます。
既存が保護コンクリート
密着工法、機械固定式それぞれ採用できます。
施工方法・工期・施工上や環境上の注意点
フェンスや機械基礎などの設置物があるような複雑な箇所の入隅や出隅箇所での施工では職人の技術が求められる施工です。
機械的固定工法の注意点としては、スラブに振動ドリルを使用してディスクをアンカーで固定するため騒音が発生します。入居者がいるマンションなどの場合は、あらかじめ生活者への周知の徹底が必要です。機械的固定工法では雨養生も軽減でき、既存防水層や下地が湿潤していても施工的に基本問題ありません。
下地調整
基本どの既存防水層でも施工可能ですが、機械固定でも突起があるような場合は平滑化や必要に応じポリマーセメントモルタルなどで補修や下地調整を行います。シート自体は自然環境に対しても強く作られていますが、決して厚みがあるものではないため衝撃や施工の際も下地の突起物などがないように下地を均一に均す必要があります。
接着工法では、シート裏面全面に接着剤を塗布して下地に張り付けますが、プライマーを使用するため低温時や強風時の施工は避けるべきです。既存防水層に膨れや剥がれがある場合は切開して取り除きあらかじめ補修をしておきます。
ジョイントや取り合い
塩ビシート防水で要になるのがジョイント部やパラペットなどの立ち上がりの端末部施工です。ジョイントは専用の溶着液で溶剤溶着とライスターなどの熱風機を使って熱融着を用いて接合していきますが、厳格には接着とは異なり塩ビシート同士が一体化するため口空きやはがれるなどの心配は少ないものの、不完全な溶着は漏水の原因となるためその分施工技術が必要です。
さらにより入り組むような取り合い部の出隅や入隅が多い箇所がある屋上ほどコーナーパッチや塩ビ鋼板製などの成形役物の使用も多くなり施工も複雑になるため技術力が必要になります。
立ち上がり
改修工事では、立ち上がりの既存防水層に浮きが生じていることも少なくないため、できるだけ撤去して施工します。立ち上がりと平場の入隅の取り合いは役物で固定し風の影響を受けないように施工します
水切りあごタイプなどの立ち上がりは端末部はアルミ製の押さえ金物で固定してシール処理をし、あごなしタイプの笠木は塩ビ鋼板の役物で固定します。
IHディスク盤
IH誘導加熱装置で塩ビシートを溶着固定するためにディスク盤を設置していきます。誘導加熱装置は磁力線を発して塩ビシート下にあるディスク盤を加熱させて塩ビシート裏面の素材と熱融着させます。屋上は画の影響も強く受ける場所です。機械的固定工法は風の影響も考慮する必要があるため、面積に応じた正しいピッチ間隔でのディスク盤の設置が必要です。
材料・道具など
田島ルーフィングやロンシール、シーカージャパンを使っています。各メーカーは塩ビシート素材そのものよりも固定ディスク盤に特徴を持たせ、風の影響によってフラッタリングを起こしにくくしシートを破断させにくい部材を使用しています。このことからわかるように塩ビシート防水の機械固定式においては、ディスク版の設置や取付、電磁誘導加熱装置の扱いによる加熱不足や加熱過剰などの技術的要素が耐久性を持たせるためにも重要になってきます。
Q&A
塩ビシート防水の耐久性について教えてください。
塩ビシート防水は、1.0mmから2.0mmなどの厚さがあり、15年以上の長期間にわたる耐久性があります。シートの厚みが均一であるため、材料の品質が安定しており、経年劣化による剥離や漏水のリスクが非常に低いです。
塩ビシート防水のメンテナンスはどのように行えばよいですか?
塩ビシート防水のメンテナンスには、年2回程度の排水溝やドレン回りの清掃、2年に1回程度の防水層の点検、5年に1回程度の専門家による点検が推奨されます。万一漏水が生じた場合には、直ちに施工業者に連絡してください。
塩ビシート防水の施工コストを抑える方法はありますか?
塩ビシート防水では、既存の防水層を撤去せずに上から新しいシートを被せる「かぶせ工法」を採用することで、廃材の処理費用や工期の短縮が可能です。また、シートの厚み・幅・長さが一定で無駄がないため、施工コストの削減にもつながります。
塩ビシート防水の防火性能について教えてください。
塩ビシート防水は自己消火性があり、延焼しにくい材料です。これにより、マンションの防火対策としても安心して使用することができます。
メンテナンス
塩ビシート防水は経年劣化に強く、一体化されたジョイント部は水の侵入を確実に防ぎますが、押さえ金物や端末部のシーリング処理された部分の劣化には注意が必要です。衝撃に強くはないため歩行の際もそこが固い履物ではなく弾力がある履物での歩行にします。