改質アスファルト防水トーチ工法の概要
合成繊維不織布や改質アスファルトなどが含侵された厚さ3ミリ程度の改修アスファルト防水シートの裏面をトーチバーナーで炙り、アスファルトを熱溶融させて貼っていく防水工法です。溶けたアスファルトが冷え固まることによって下地とシートの接着剤にもなり防水層としての機能を発揮します。
ロール状になっている改質アスファルト防水シートを転がしながら敷き詰めますがしっかりと溶融されたアスファルトシートはシート同士の継ぎ目の隙間なく密着し水密性が良い防水工事方法です。

費用感
熱工法などアスファルト防水の流し張り工法などのように大型の溶融窯などは運搬や設置による労力や管理も必要とせずガストーチバーナーだけで大型の溶融釜を工事現場に運搬し設置するためのコストが省けます。
改修工事の場合、撤去などがなくトーチ工法の適用下地であれば単層張りの施工も多く耐久性がありながらも費用対効果の良い防水工事といえます。
メリット
現状の防水層を撤去する必要がない場合でのアスファルト防水の場合は、既存の防水層に含まれるアスファルト成分を再活性化して、防水機能性を回復させることも可能です。例えば、アスファルトの老化によって硬化やひび割れが発生した防水層に対してトーチであぶって再溶融させるように、アスファルトの柔軟性や粘着性をある程度回復させ、防水性能を再び高めることも可能です。
適用下地
既存防水層の劣化度によりますが、アスファルト防水や保護コンクリートがメインです。シート防水などの場合は劣化状態が悪くなければ、粘着タイプの自着式通気層がある改質アスファルトシートを1層目として敷き、2層目にトーチバーナーであぶって施工する通気仕様を採用します。
改質アスファルト防水トーチ工法の適用判断
改質アスファルト防水トーチ工法の施工は耐久性を誇るだけに他の防水工法に比べて多様で仕様も複雑です。有資格者による現地調査の元正しい施工方法をご提案をさせて頂きます。
コンクリートには必ずと言って良いほど水分が含まれています。下地のコンクリートの水分を完全に除去することは現実問題として実際には困難です。
この水分が蒸発して体積を増すことでフクレ現象を引き起こし、防水層と下地との接着を弱める原因になるわけですが、通常は水分が存在しても膨れる程度に至らない場合、もしくは多少の膨れがあったとしても見た目に問題があったとしても防水性能に対して特別問題があるわけでもありません。
ただし膨れたことによって長期間放置すると破れやすくなる状態になることがあります。
膨れを可能な限り防止するには、プライマー塗布後にトーチバーナーを使用しない通気機能を持った自着層付きタイプの改質アスファルトルーフィングを一層目として、2層目にトーチバーナーを使用した改質アスファルトシートで施工します。
既存防水層を撤去しての施工
基本の改質アスファルトシートトーチ工法は既存防水層がアスファルトの場合は基本1層で施工する場合も多いです。劣化がひどい場合は既存防水層を撤去し下地のコンクリートスラブまで露出して施工をする場合もあり通気タイプの2層のかぶせ方法で完成させる施工もあります。
既存防水層を撤去する状況になるということは、膨れからや伸縮による破断などの劣化が劣悪になっている場合なので、そのような場合は下地からの湿気を逃がす脱気筒を付ける通気タイプの2層での改質アスファルト防水トーチ工法が良い状況の時もあるのでよく調査をしてその判断をします。
継ぎ目施工の重要性
ロール状になっている改質アスファルトシートを転がし広げながら並行してトーチバーナーであぶりながら施工していきます。その際充分にアスファルトを溶かしながら転がし広げていく必要がありますが、トーチバーナーの火炎の熱は1000度ほどになるため少しのあぶりで十分と考えず炙り不足を原因とした施工不良がないようにシートの端から溶けたアスファルトがはみ出すぐらいの感覚を持って施工していきます。
漏水個所としても少なくない防水の弱点ともいわれる継ぎ目部分の施工は特に重要になります。
改質アスファルトシートは長片側になるサイドラップのジョイント部は100ミリを取り短辺側になるエンドラップは突きつけ施工ですが、共にシート貼り付け後は、はみ出したアスファルトを再度あぶりながらトーチコテで押さえつけて貼り付けを完成させることで水密性を確保し耐久性を保たせます。
仕上げ種類
露出防水の非歩行とする場合は、改質アスファルトシートの一番表層にあたる部分は主に砂粒がついているためそのままで仕上げとするのか、さらにその上に保護塗料を塗布することもできます。露出防水とする場合はバーナーによる足元へのやけどやシートにできるだけシートへの足跡を残さないためにも後退法というフック棒などを使用しながら施工方法で施工していきます。
もし屋上を歩くなどの環境とする場合は、軽歩行として軽歩行用板状仕上げ材や、改修工事としての施工としてはごくまれではありますが今までの防水層の蓄積も考慮して押さえコンクリートという仕上げ方法もあります。
・砂付き・・粗目の砕石砂付きタイプと細目の細砂タイプなどがあり砂粒が散布付着されています。紫外線を受けて甲羅上の亀裂を防止するために砂付きが主流です。アスファルトは粘着性があり太陽熱で熱せられるとさらに粘着性が増すため汚れやほこりなどの付着を防止する意味もあります。
・保護塗料・・砂付きの上に保護塗料を塗布して遮熱機能を付加するだけでなく、紫外線からのアスファルト防水を保護することで耐用年数を伸ばすことが可能になります。アクリル樹脂を主成分とするものが多く、日射反射率50%~80%前後までの高反射塗料もあります。
・保護コンクリート・・保護コンクリートは基本歩行するための仕様なので改修工事でそこまでのコストを掛けて施工する場合はほぼ少ないといえます。
・軽歩行仕上げ・・防水層の保護はもちろん、アスファルト系砂付成型板、天然の石粒、磁器タイル、ブロックタイプを含む多様な素材があり、屋上をよく利用する場合に備えてカラフルなパターンを用いたデザイン仕上げで、屋上の美観を豊かにすることが可能です。
改質アスファルト防水トーチ工法の適材適所
改質アスファルト防水トーチ工法を選択する場合、下地・既存防水層・現場環境の違いを良く理解して判断することで、より最適な工法で耐久性を最大限に伸ばした施工ができるようになります。
2層タイプの改質アスファルトシートトーチ工法の施工をする場合、1層目となる自着層付きタイプの改質アスファルトルーフィングにも2種類があり、ひとつは通気層機能のあるタイプともう一つは通気機能がないタイプがあります。
通気機能がないタイプはシート全面が粘着層になっており、もう一方の通気機能を持った自着層改質アスファルトルーフィングは、粘着層が部分的な構造になっており粘着層がない部分を利用して下地からの水分や湿気を通気させる構造にし脱気筒をつけてそこから水分等を蒸発させて膨れ等を防止します。
いずれも一層目の自着層付きというものはトーチバーナーを使用しないルーフィングで、2層目にトーチバーナーで改質アスファルトシートを熱溶融させて施工します。
さらに1層目は下地成分などの悪影響を遮断するための絶縁シートとしての働きもあります。また2層ともトーチバーナーを使った工法もあります。