横浜市港北区のマンションの劣化に合わせたタイル壁の補修工事
今回は、マンションの塗装工事前の下準備として、タイル壁の補修工事についてご紹介します。

前回は外壁の爆裂や浮きの補修工事について、前々回は外壁のクラック補修工事についてお伝えしました。
今回も引き続き、タイル壁の補修工事に焦点を当てて詳しく解説いたします。
タイル壁は通常の塗装外壁とは補修方法が大きく異なります。
また、タイルにクラックが入っている場合と、タイルが浮いている場合とでは、それぞれ補修方法が変わりますので、ご覧ください。
タイルの割れ・クラックの補修工事

まず、タイルが割れている、いわゆるクラックが入った状態の補修工事です。
割れたタイルは、基本的に張り替えを行います。
写真をご覧ください。張り替え範囲にテープで印をつけています。
通常、外壁のクラックは窓枠まわりなどで発生しやすいものですが、今回は外壁の中央付近でクラックが発生していました。
これは建物の動きなどによって生じるクラックです。
建物の動きによって、意外な場所にクラックが出現することはよくあります。
案外真ん中のクラックは見落とす傾向にあるので、ご自宅を点検される際は、外壁全体をしっかり確認してみてください。

タイルの張り替え範囲が決まったら、目地にコンクリートカッターの刃を入れ、縁を切ります。
これにより、張り替えるタイルと残すタイルを切り離します。

次に、クラックの入ったタイルを削り機で慎重に削り取ります。
タイルは陶器製で割れやすいため、非常に注意深く作業を行い、無事に取り除くことができました。

割れたタイルを取り除いた後は、丁寧に清掃を行い、新しいタイルを張り込みます。

タイルを張り終えたら、先端にスポンジがついたコテで目地材を塗り込み、目地範囲からはみ出すくらいたっぷり入れ、最後にスポンジで水拭きをして余分な目地材を拭き取ります。
これでタイルの張り替えは完了です。

実はこの張り替え用タイルは、元のタイルとまったく同じものではありません。
タイルは数年で廃盤になることが多く、築10〜15年後の補修時には同一製品が手に入らないケースがほとんどだからです。
新築時にハウスメーカーが予備タイルを残してくれていれば同じものを使用できますが、そうでない場合は、できる限り近い色・質感のタイルで対応することになります。
まれにお客様から「もっと近い色はないですか?」とご質問いただくことがありますが、完全に同じ色は存在しません。
同じタイルで補修したい場合には、新築時に渡される予備タイルなどを保管することをおすすめ致します。
タイルの浮き補修工事

次は、タイルが浮いている場合の補修工事です。
この補修方法は、浮きの状態によって異なります。
今回は「タイルだけが浮いている場合」と「タイルの土台から浮いている場合」の2パターンがあり、対応を使い分けました。
タイルの土台から浮いている場合はエポキシ樹脂注入で密着させ、土台ごと浮いている場合はタイルを削り落として土台から補修します。
今回の建物は土台から浮いていたため、エポキシ樹脂注入工法を選択しました。
前回のブログで、軒天の浮き補修工事にてご紹介した方法と同様です。
まず打診棒でタイルを叩き、中空音で浮き範囲を特定し、範囲が決まったら樹脂注入位置を決め、ドリルで穴を開けます。
このとき、注入口は必ず目地部分に開けます。
タイル面に直接穴を開けると陶器製のため割れてしまうからです。

穴を開けたらエアダスターで内部を清掃します。
細いノズルを差し込み、エアを吹き込むことで、奥のゴミや削りカスを一気に吹き飛ばします。
穴の形状は行き止まりの洞窟のようになっているため、空気が跳ね返りながらゴミを押し出してくれる仕組みです。

清掃が終わったら、エポキシ樹脂を注入します。
前回の浮き補修でもご紹介したように、漏れ防止で小さくカットしたウエスをねじ込み、その上から注入ガンで樹脂を注入しました。
注入穴は浮き空洞とつながっているため、穴だけでなく内部全体に均一に行き渡るよう慎重に注入します。
写真の青テープ部分が浮き範囲です。
エポキシ樹脂が少し溢れるくらいまで、たっぷり注入しました。

その後、浮き部分の空洞と注入穴の樹脂を密着させるためアンカーピンを打ち込み、溢れた樹脂をウエスで拭き取りながら表面を平らに整えます。

最後にコテで目地材を塗り込み、穴を塞いでタイル浮き補修は完成です。
エポキシ樹脂は接着力が高く、硬化後の強度も優れていますが、紫外線に弱い性質があります。
そのため、今回のように目地材で樹脂部分を完全に塞ぎ、紫外線が当たらないようにすることが重要です。
目地からの注入だったため、完成後はどこを補修したのかほとんど分からなくなります。 これでタイルの浮き補修工事は終了です。
配管バンドの取り替え工事

同じタイルの外壁で、配管バンドの取り替え工事も行いましたので併せてご紹介します。
上記の写真が施工前の状態です。
鉄製バンドがひどく錆びています。
今回はこのバンドを撤去し、ステンレス製の新しいバンドに交換します。
配管バンドは錆が軽度であれば塗装時に一緒に塗装してしまうこともありますが、今回は錆がひどいためバンド自体を交換しました。
交換すれば根元部分まで塗装する必要がなく、工事としても効率的です。

まず錆びたバンドをすべて取り外します。
壁面に丸いアンカー(バンドを固定する留め具)が残っているのがお分かりいただけるでしょうか。
新築時に打ち込まれたアンカーは、今は配管があるため打ち直しができません。
そこで、アンカーを覆う形でビス留めできる金具をかぶせる仕様に変更します。
これなら斜め方向からビス留めが可能になり、しっかり壁に固定できます。

今回はバンドを外してから配管と外壁の塗装を行い、その後に新しいステンレスバンドを外壁に取り付けました。
工事手順によっては、下地補修時に新バンドまで取り付けその上から養生をし、後から塗装する場合もありますが、順番は工事の方法や状況に応じて変わります。

これで配管バンドの取り替えも完了です。
多様なタイル壁の下地補修工事
今回は、タイル壁の下地補修工事についてご紹介しました。
タイル壁のクラック・浮きの補修、配管バンドの交換取り付けなど。タイル壁の工事だけでも様々な工法があります。
下地補修は壁面の種類や劣化状況に応じて、さまざまな工法を使い分ける必要があります。
こちらのマンションは12世帯・3階建ての小規模な建物ですが、これまで3回にわたるブログでも紹介しきれないほど、多様な補修工事が行われました。
これらの補修工事の中には、ブログを読んでいらっしゃるお客様の家にも参考になる工事があると思います。少しでも似た外壁の状態がありましたら、参考になさってください。
塗装工事の重要な下準備である補修工事も、いよいよ次回で最後となります。
次回はタイルの薬品洗浄とシーリングの打ち替えについてご紹介します。
ぜひ次回もご覧ください。
