雨漏りを未然に防ぐ横浜市神奈川区の屋上防水工事 トーチ工法で費用も時間も削減する方法
今回は、横浜市神奈川区にある鉄筋コンクリート造5階建てのビルにて行った屋上防水改修工事について、その流れやポイントをご紹介します。
建物の防水工事というと「雨漏りが起きてから行うもの」と思われがちですが、実はその多くは予防的な意味合いも含んでいます。建物を長く健やかに保つためには、傷んでいる箇所を的確に見極め、必要な処置を無理なく施していくことが大切です。
今回の工事では、屋上全体の状態を細かく調査したうえで、劣化の進んだ箇所だけを丁寧に補修し、既存の防水層を活かした部分改修という方法を取りました。コストを抑えながらも、高い防水性能を確保できる工事内容の全貌をどうぞご覧ください。
現地調査と改修方針の決定
工事の第一歩は、屋上全体の詳細な現地調査です。今回の建物は築年数が経っていましたが、構造体(コンクリート躯体)自体には大きな劣化は見られませんでした。既存の防水はアスファルト防水で施工されており、平場には膨れが、立ち上がりや排水口まわりには浮きや小さなひび割れが見られました。
ただし、防水層をすべて撤去するほどの深刻な損傷ではなかったため、改質アスファルトシートを用いたトーチ工法による重ね張りを採用することにしました。既存の防水層を活かすことで、工期と費用を抑えつつ、建物への負担も軽減できる、効率的でバランスの良い工事計画となりました。
部分撤去と下地処理
工事が始まるとまず、既存の防水層や部材の状態を再確認しながら、劣化の進んでいる部分だけを丁寧に撤去しました。特に、屋上の端部にある押さえ金物は錆が進行しており、ビスがコンクリートに固着していたため、斫り(はつり)作業を使って慎重に取り外しました。
立ち上がり部分では浮きや密着不良のあった箇所を一部撤去し、平場に関しては防水層の状態が比較的良好だったため、既存層をそのまま活かすことに。すべてをやり直すのではなく、必要な箇所にのみ手を加えるという判断が、コストを抑えながらも耐久性を維持する鍵となります。
撤去の後は、ケレン清掃で下地のほこりや浮いた素材をしっかりと除去。下地のきれいさが防水材の密着力に大きく影響するため、とても大切な工程です。
仮防水処理と湿気対策
平場で見られた膨れについては、トーチバーナーで加熱して内部の水分を蒸発させ、圧着して処理しました。防水層の中に残った水分は、将来的な膨れや剥がれの原因になるため、こうした水分処理は長持ちする防水をつくるために欠かせません。
また、立ち上がりや接合部など、水が入りやすい箇所に仮防水処理を施しました。これは、工事の途中で雨が降ってしまった際に、建物内部へ水が侵入するのを防ぐための大事な配慮です。
プライマー塗布と排水部の補修
下地が整ったら、防水材をしっかりと密着させるためにプライマー(接着材)を塗布します。立ち上がり部分にはアスファルト系のプライマーを、平場にはリベースという下地に適した材料を選び、下地の吸水具合を見ながら丁寧に塗布しました。
アスファルトプライマー塗布
特に雨水が集まりやすいドレン(排水口)は、防水層の中でももっとも劣化が早い箇所です。今回は既存のドレンが傷んでいたため、改修用ドレンを設置し、新たに防水層でしっかり巻き込む処理を行いました。さらに、ドレンまわりには防水シートを三重に重ねて補強し、水の集中による負担にも十分耐えられる構造に仕上げました。
あわせて、防水層の中にこもった湿気を逃がすために脱気筒も新設。内部からの膨れを防ぎ、防水層がより長く安定して機能するようにしています。
トーチ工法による防水施工
既存の防水層に劣化が見られたため、今回はトーチ工法による改質アスファルトシート防水を採用しました。
写真は、ポリマットキャップシートをバーナーで加熱しながら丁寧に貼り進めている様子です。シート裏面のアスファルトをあたためて柔らかくし、下地にしっかりと密着させていきます。密着性に優れており、重ね部分も熱で溶着されるため、水の浸入を抑えやすいのがこの工法の特長です。
トーチ工法は、普段人の出入りが少ない屋上や、作業スペースにゆとりがある現場に適しています。また、既存の防水層を撤去せず、そのまま上から施工できるケースも多く、工期の短縮やコスト面でのメリットもあります。
施工中は、バーナーの火力と作業スピードのバランスがとても重要です。写真のように、重ね幅を均一に保ちながら、丁寧な仕上がりを心がけて作業を進めています。
トップコートと金物設置
防水シートの施工が完了したら、仕上げとして表面にトップコート(保護塗料)を塗布します。今回はSPファインカラーを使用し、紫外線や雨風から防水層をしっかり守るとともに、見た目の美しさも高めました。
その後、立ち上がり部には新しい押さえ金物を取り付けて端部を固定。ビスにはステンレス製を使用し、錆や膨張による破損を防ぐ工夫も忘れずに行っています。こうした細部まで丁寧に仕上げることで、長期にわたる安心感につながります。
【関連動画】
建物にとって本当に必要な防水を見極めるために
今回の現場を通して改めて感じたのは、防水工事は「ただ防水材を貼る作業」ではなく、建物の状態に寄り添いながら、その先の未来を見据えて行うメンテナンスであるということです。
壊すべきか残すべきか、どの工法がもっとも建物に合っているか。それは、現場での観察力と、長年の経験に基づく判断があってこそ見えてくる答えです。
これからも、ひとつひとつの現場に丁寧に向き合い、建物を長く大切に使っていただけるよう、心を込めて防水工事に取り組んでまいります。防水のことで何かございましたら、お気軽にお問い合わせください。
