塩ビシートからウレタン防水へ!横浜市の5階建てRC建物の屋上リニューアル【前編】

今回は、磯子区のRC造5階建てマンションの屋上で行われたウレタン塗膜防水改修工事の全工程を、解説していきます。
この現場は、既存の塩ビ機械固定防水からウレタン防水への改修で、AGC製のES工法を採用しています。防水工事の技術的な側面や、建物環境、構造的背景、既存防水層との関連性なども含め、プロの視点でお届けします。
1. 立上り・平場の既存防水層(塩ビ機械式固定)の確認
既存の塩ビ機械固定防水の状況です。屋上の立上り部と平場、そしてEV機械室の屋根部分が確認できます。笠木部分には既にウレタン塗膜防水が施されていますが、これから全体を改修していきます。塩ビシートは、機械固定されているため、風の影響を受けやすいのが特徴です。
また、経年劣化でシートのジョイント部分が剥がれてくることもあります。今回の改修では、これらの弱点を克服し、より耐久性の高いウレタン防水に切り替えます。RC構造は、コンクリートの収縮やひび割れが起こりやすいため、下地処理が非常に重要です。

2. 鳩小屋・架台笠木部分の劣化状況の確認
鳩小屋や架台部分も同様に既存の塩ビ機械式防水が確認されました。これらの箇所は屋上の中でも複雑な形状をしており、防水層の弱点となりやすい部分です。
笠木周りは特に雨水が溜まりやすく、汚れや防水材の劣化が進行していました。こうした部位には、十分な補強と高い密着性を持つ防水材料を用いることが求められます。

3.笠木の爆裂の原因調査:鉄筋の錆による劣化
笠木部分では、コンクリートが剥がれ落ちた爆裂現象が確認されました。これは内部の鉄筋が錆びて膨張し、その圧力によってコンクリートが破壊されたものです。
この現象は、特に沿岸部の建物で多く見られ、塩害の影響が原因と考えられます。放置すると鉄筋の腐食が進み、構造全体の耐久性に深刻な影響を与えるため、爆裂部分の補修は非常に重要です。

4.爆裂部分の除去:ハンマーによる下地処理
爆裂したコンクリート部分を石頭ハンマーで除去しました。この作業では、劣化部分を完全に取り除くことが目的です。
劣化した箇所が残ったままでは、補修材が十分に密着せず、将来的な剥離や再劣化のリスクを高めてしまいます。また、除去によって表面を荒らすことで、新たな補修材が確実に密着できる下地を整えます。

5. 高圧水洗浄:下地表面の清掃
既存防水層の表面を高圧水洗浄で洗い流し、汚れや藻、油分を徹底的に除去しました。この作業は、新しい防水材を塗布する際に欠かせない工程です。
特に汚れが残った状態では、防水材が下地に密着せず、施工不良や剥がれの原因となります。洗浄後、下地が清潔で均一な状態に仕上がり、次の工程の準備が整いました。

6. 爆裂部分の清掃とユニエポ接着剤の塗布
爆裂部分をハンマーで除去した後、清掃を行い、ユニエポというエポキシ系接着剤を塗布しました。この接着剤は、補修材を確実に密着させる役割を果たし、補修部分の剥離を防止します。
塗布後の接着剤はすぐに硬化が始まるため、迅速かつ丁寧な作業が求められます。

7.エポキシ系樹脂モルタルによる成形
爆裂部分にエポキシ系樹脂モルタルを用いて成形を行いました。このモルタルは、コンクリート補修に適した高強度で耐久性の高い素材です。
厚付け施工にも適しており、補修後の箇所を元の形状に戻すだけでなく、鉄筋を錆びから保護する効果もあります。これにより、下地が均一かつ安定した状態に整い、防水材を塗布する準備が整いました。

8. タイル際養生と穿孔作業の準備
タイル際の補修部分を紫色の養生テープで保護し、樹脂注入用の穿孔作業を行いました。穿孔にはドリルを用い、正確な位置と深さで穴を開けます。
この穴は、エポキシ樹脂を内部に注入し、ひび割れ部分を完全に充填するために使用します。穿孔作業の精度が、補修の効果を大きく左右します。


9. 穿孔部分の清掃と樹脂注入の準備
穿孔した穴の内部をエアーダスターで清掃し、粉塵やゴミを除去しました。この工程を省略すると、樹脂が内部に十分に浸透しない可能性があるため、慎重な清掃が必要です。
清掃後、樹脂注入用のグリスガンを用意し、エポキシ樹脂の注入作業に備えます。

10. グリスガンによるエポキシ樹脂の注入
グリスガンを用いて、エポキシ樹脂を穿孔部に注入しました。この工程では、樹脂が完全に内部に行き渡るまで圧入を続けます。
周囲が汚れないようウエスでガン先を覆い、確実に樹脂が隙間なく充填されるよう丁寧に施工します。樹脂の注入によって、ひび割れ部分が補強され、構造的な弱点が解消されます。

11.ステンレスピンの挿入
樹脂注入後、穿孔部にステンレス製のピンを挿入しました。このピンは、樹脂の流出を防止しつつ、内部に圧力をかけて樹脂を確実に定着させる役割を持っています。
ピンが「プチ」と音を立てて固定されるまで押し込み、抜けないようしっかりと設置します。

マンション大規模修繕工事の様子を合わせてご紹介いたします。各工程の詳細が見られますので、ご覧いただけますと幸いです。
あとがき:防水工事における下地補修の重要性
今回の工程では、劣化部分の除去から樹脂モルタルの成形、ひび割れ補修まで、下地補修に関する詳細な作業を紹介しました。下地補修は、防水工事全体の品質を左右する重要な工程であり、これが不十分だと新しい防水層もその性能を十分に発揮できません。
次回の後編では、ウレタン塗膜防水の施工から完成までを解説し、屋上全体の防水性能がどのように向上したかをお伝えします。防水工事は目に見えにくい部分が多い作業ですが、建物の寿命を延ばし、雨漏りを防ぐために欠かせないプロセスです。
私たちは一つひとつの工程を丁寧に進めることで、最高品質の施工をお届けします。気になる点がございましたら、どうぞお気軽にお声がけください。